「やわらかく仕上げた食品」であることと、「食べる人が選びやすい食品」であることは、同じではありません。

高齢者向けの食品を開発・販売する際には、やわらかさに加えて、どのような食事の困りごとに配慮した商品なのか、どの状態で食べることを想定しているのかを伝える必要があります。本人だけでなく、家族や介護者が商品を選ぶ場面もあるためです。

その情報を整理する手掛かりとして、農林水産省の「スマイルケア食」と、日本介護食品協議会の「ユニバーサルデザインフード(UDF)」があります。両者の位置付けと表示条件を理解し、商品情報にどう生かすかを確認します。

1.「食べやすさ」を三つの視点で整理する

食事の困りごとには、噛むこと、飲み込むこと、必要な栄養をとることなど、異なる側面があります。商品の説明でも、これらを分けて整理すると、配慮している内容が伝わりやすくなります。

例えば、噛むことや飲み込むことに問題がなくても、食事から十分な栄養をとるための補助が必要な場合があります。一方、噛みにくさへの配慮と、飲み込みにくさへの配慮では、確認する食品の性質や選び方が異なります。

農林水産省のスマイルケア食は、こうした視点から食品の範囲を整理した枠組みです。「高齢者向け」という年齢の説明に加えて、商品の対象となる食事の課題を伝える手掛かりになります。[1]

2.スマイルケア食の青・黄・赤マークの位置付け

スマイルケア食では、食品を選ぶ際の手掛かりとして、青・黄・赤の識別マークを設けています。[1]

識別マーク:対象となる食事の課題

  • 青:噛むこと・飲み込むことに問題はないものの、健康維持のために栄養補給が必要な人向け
  • 黄:噛むことに困りごとがある人向け
  • 赤:飲み込むことに困りごとがある人向け

青マークは、食品のやわらかさを表す区分ではありません。また、黄・赤マークにはそれぞれ分類があり、マークの色だけで商品の条件を判断することもできません。

企業が制度を調べる際には、「どの色に当てはまるか」と「その商品が表示に必要な基準・手続きを満たしているか」を順に確認すると、検討事項を整理しやすくなります。

3.UDFは、食品の物性を共有するための自主規格

UDFは、日本介護食品協議会が定める自主規格に基づく、食べやすさに配慮した食品です。日常の食事から介護食までを対象とし、食品のかたさや粘度などをもとに区分を設けています。[3]

基本となる四つの区分は、次のとおりです。

UDFの区分:食品の形状を伝える表現

  • 区分1:容易にかめる
  • 区分2:歯ぐきでつぶせる
  • 区分3:舌でつぶせる
  • 区分4:かまなくてよい

UDFには、食品や飲み物にとろみを付ける「とろみ調整食品」もあります。使用量や調整方法は商品ごとに確認します。[3]

スマイルケア食とUDFは、関連する情報を扱っていても、運営主体やマークの利用条件が異なります。名称や番号が似ている場合でも、一方の区分を取得すれば他方のマークを自動的に表示できると考えないことが大切です。

4.マークを付ける前に確認したい利用条件

スマイルケア食は、色ごとに条件が異なる

農林水産省の利用許諾要領では、識別マークを表示するための基準と申請手続きを定めています。主な確認事項は次のとおりです。[2]

  • 青マーク:エネルギー・たんぱく質などの基準を満たし、製造業者が自己適合宣言を行い、所定の方法で公表すること
  • 黄マーク:そしゃく配慮食品の日本農林規格に適合するものとして、JASマークによる格付の表示が付されていること
  • 赤マーク:該当する規格を満たし、特別用途食品の「えん下困難者用食品」として表示許可を得ていること

これらの条件に加えて、識別マークの利用には農林水産省への申請と利用許諾が必要です。青マークでは、カプセル・錠剤の形状の食品、機能性表示食品、特別用途食品は対象から除外されています。

食品の栄養成分や物性を確認する作業と、マークの利用条件を確認する作業の両方を、商品開発の段階から進めておくと実務が整理しやすくなります。

UDFマークには、会員資格と事前申請の条件がある

日本介護食品協議会の案内では、UDFロゴマークを使用できるのは、同協議会の会員であるブランドオーナー、または条件を満たす会員メーカーです。会員メーカーが製造し、販売者が非会員となる場合には、メーカー名を製品に表示する条件があります。[4]

商品への表示に際しては、事前に所定の申請書を提出し、受理される必要があります。「やわらかい」「食べやすい」という自社の評価だけでマークを付けることはできません。

いずれも、実際の利用を検討する際には、各運営主体が公開する最新の要領や案内を確認します。

5.売場・商品ページでは、区分と使い方を一緒に伝える

マークや区分は、商品選びの手掛かりになります。そのうえで、売場や商品ページには、実際に準備し、食べる場面で必要な情報もまとめておくと役立ちます。

事業者の実務では、次の項目を確認すると情報を整理しやすくなります。

  • 配慮している内容:栄養補給、噛みやすさ、飲み込みへの配慮のうち、何を想定しているか
  • 区分と表示条件:正式な区分名、マークの利用資格、対象となる商品の範囲が明確か
  • 調理・提供方法:加熱、解凍、混ぜ方、提供時の状態など、商品固有の案内が分かりやすいか
  • 栄養・原材料の情報:一食・一包装当たりの量や栄養成分、アレルゲンなどを確認できるか
  • 保存・開封後の扱い:保存方法や開封後の取扱いを、家族や介護者も確認しやすいか
  • 相談への導線:食べることに不安がある場合の相談案内と、商品に関する問い合わせ先が分かるか

スマイルケア食の案内では、食べることについて気になることがあれば、医師、歯科医師、管理栄養士等の専門職に相談することが示されています。UDFでも、噛むことや飲み込むことに重要な障がいがある、または疑われる場合には、専門家への相談を案内しています。[1][3]

商品の区分は、個々の人への適合や、誤嚥しないことを一律に保証するものとして説明しないようにします。

6.食べる人と、支える人の両方が選びやすい情報へ

高齢者向け食品の情報提供では、商品を食べる本人に加え、購入する家族、調理する介護者、相談を受ける専門職など、複数の読み手を想定することが役立ちます。

区分名を正確に表示し、調理方法や栄養情報を見つけやすくする。問い合わせ先や相談の案内を、売場と商品ページの双方で確認できるようにする。こうした情報の整備は、商品の特長を具体的に伝えるうえでの基盤になります。

スマイルケア食とUDFを理解することは、マークを加えるためだけの作業ではありません。食べる人の困りごとと、食品が配慮している内容を結び付け、選びやすい商品情報をつくるための出発点です。

参考情報

[1] 農林水産省「スマイルケア食(新しい介護食品)」

[2] 農林水産省「スマイルケア食識別マーク利用許諾要領」

[3] 日本介護食品協議会「ユニバーサルデザインフードとは」/UDF区分の案内

[4] 日本介護食品協議会「UDFロゴマーク」

制度・利用条件は2026年10月11日に公開情報を確認しています。申請や表示の際は、各運営主体の最新の案内をご確認ください。

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