― 認知症基本法・基本計画・認知症バリアフリー宣言を事業者向けに整理
毎年9月は「認知症月間」、9月21日は「認知症の日」です。
日本では2024年1月に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」において、認知症に関する理解を社会全体で深めるため、9月21日を「認知症の日」、9月を「認知症月間」と位置付けています。厚生労働省は2026年度も、全国の関連イベントや関係団体、企業の取組をまとめて公開しています。
健康、食品、介護、生活関連産業にとって、認知症は特定の介護事業者だけに関係するテーマではありません。一方で、企業に求められる対応を必要以上に広く解釈する必要もありません。
本稿では、認知症月間を機に、現在の制度の位置付けと、企業・団体が実際に利用できる公的な仕組みや情報源を整理します。
1.まず確認したい「認知症基本法」と現在の政策位置付け
「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」は、認知症の人を含む国民一人ひとりが相互に支え合いながら共生する社会の実現を目的として施行されました。
その後、同法第11条第1項に基づき、政府は2024年12月3日に「認知症施策推進基本計画」を閣議決定しています。現在の国の認知症施策は、この基本計画を土台として推進されています。
企業がこの制度を確認する際に重要なのは、
- 認知症基本法
- 国の認知症施策推進基本計画
- 都道府県・市町村の認知症施策
- 官民連携による認知症バリアフリー関連施策
を分けて理解することです。
すべてが企業に対する直接的な法的義務として設定されているわけではありません。
一方で、商品・サービス・店舗・地域連携などを通じて高齢者と接点を持つ企業にとっては、今後の社会環境や行政施策の方向性を把握するための重要な基礎情報となります。
2.企業・団体が利用できる「認知症バリアフリー宣言」
認知症関連の企業支援情報として、特に確認しておきたいのが「認知症バリアフリー宣言」です。
この仕組みは、日本認知症官民協議会の取組の一つとして2022年3月に開始されました。
企業や団体が、認知症バリアフリーに向けた方針や取組を宣言し、それを公表することで、認知症の人やその家族が安心して商品・サービス・店舗等を利用できる環境づくりにつなげることを目的としています。
対象は介護事業者だけではありません。
卸売・小売、金融、保険、飲食、サービス、医療・福祉など、さまざまな業種の企業・団体が登録されています。公式ポータルでは業種、地域、取組内容などから登録組織・事業所を検索できます。
健康産業や食品関連企業にとっても、自社の事業内容に応じて参加を検討できる制度です。
3.「認知症バリアフリー宣言」はどのように申請するのか
認知症バリアフリー宣言は、専用ポータルから申請できます。
公式案内によると、申請にあたっては、主に以下の事項を確認する必要があります。
- 「認知症バリアフリー宣言基準」に従って宣言書を作成する
- 「維持管理遵守事項」および「運営要領」に同意する
- 反社会的勢力・団体との関係がないことを宣誓する
- 企業・団体情報、対象事業所、取組内容などを申請フォームへ入力する
- 事務局による確認後、登録・公開される
登録後は、必要に応じて宣言対象となる事業所情報も公開できます。
また、2026年9月時点の公式案内では、登録後に申請事務手数料として税別5,000円が設定されています。
申請を検討する企業は、最新の「宣言基準」「維持管理遵守事項」「運営要領」を確認したうえで準備を進める必要があります。
4.宣言内容は「人材育成」だけではありません
認知症バリアフリー宣言では、単なる社員研修だけでなく、企業や団体の事業活動に応じた幅広い取組が想定されています。
公式ガイドブックでは、認知症の人や家族だけでなく、認知症のある従業員やその家族なども含めて「当事者」と捉え、プライバシーや尊厳を尊重した取組を行うことが示されています。
また、取組はボランティアや社会貢献活動に限定されていません。
各企業が、
- 自社の商品・サービス
- 店舗
- 人材
- 地域ネットワーク
- 社内制度
- 既存の事業資源
などを踏まえて、継続可能な形で宣言内容を設計することが想定されています。
つまり、介護業界だけの制度ではなく、自社の既存事業の中でどのような関わり方が可能かを検討できる仕組みになっています。
5.食品・健康関連企業でも参加事例があります
健康・食品関連企業が制度を検討する際には、他業種だけでなく、食品流通や生活関連事業者の事例を参考にすることも有効です。
たとえば、日本生活協同組合連合会は2025年に「認知症バリアフリー宣言」を登録しており、卸売業・小売業として公式ポータルに掲載されています。
また、公式検索データベースでは、飲食サービス、卸売・小売、医療・福祉、金融・保険など、幅広い業種の事例を確認できます。
自社で宣言を検討する場合は、まず同業種または近い事業形態の企業事例を確認することで、実際の宣言内容をイメージしやすくなります。
6.認知症月間に企業が利用できる公式情報
9月の認知症月間に合わせて、厚生労働省では関連情報を集約しています。
2026年度の特設ページでは、
- 認知症の日/認知症月間の趣旨
- 各地域の関連イベント
- 関係団体の活動
- 認知症バリアフリー宣言企業の取組
- 地方厚生局による取組
などがまとめられています。
企業が自社で認知症関連の情報発信を行う場合も、独自情報だけで構成するのではなく、こうした公式情報を参照することで、現在の国の政策や社会的な位置付けと整合性を取りやすくなります。
また、9月には「健康増進普及月間」「食生活改善普及運動」など、健康分野の複数の啓発期間も設定されています。自社の事業領域に応じて、それぞれの公式施策との関係を整理して情報発信を行うことが重要です。
7.制度参加と商品PRは分けて考える
健康食品やウェルネス関連企業にとって特に注意したいのは、認知症月間への参加や認知症バリアフリーの取組と、個別商品の健康効果訴求を混同しないことです。
「認知症月間に参加している」
「認知症バリアフリー宣言を行っている」
という企業活動は、それ自体が特定商品に認知機能改善、認知症予防などの効果があることを意味するものではありません。
制度参加、社会的取組、商品広告はそれぞれ目的が異なります。
特に健康食品、サプリメント、機能性関連商品について情報発信を行う場合は、認知症関連の社会的取組と商品効能の表現を明確に分ける必要があります。
これは企業の認知症施策への参加そのものを慎重にするという意味ではなく、むしろ制度参加の信頼性を保つために重要な考え方です。
8.事業者向け確認ポイント
認知症月間をきっかけに制度情報を確認する場合、企業では次の項目を整理しておくと実務上わかりやすくなります。
認知症月間・企業向け制度確認リスト
- 9月が「認知症月間」であることを確認する
- 9月21日が「認知症の日」であることを確認する
- 認知症基本法の目的と現在の政策位置付けを確認する
- 認知症施策推進基本計画の内容を確認する
- 自社が認知症バリアフリー宣言の対象となり得るか確認する
- 同業種・近似業種の登録事例を検索する
- 宣言基準、維持管理遵守事項、運営要領を確認する
- 登録対象とする事業所の範囲を検討する
- 申請手数料など最新の登録条件を確認する
- 社会的取組と個別商品の健康効果訴求を分ける
すべての企業が直ちに宣言を行う必要があるわけではありません。
まずは制度の内容を確認し、自社の事業、顧客、地域との関係に照らして、どのような参加が適切かを検討することが現実的です。
まとめ
認知症月間は、認知症について社会全体で理解を深める期間であると同時に、企業にとっては関連制度や官民連携の仕組みを確認する機会でもあります。
2024年の認知症基本法施行、その後の認知症施策推進基本計画、そして企業・団体が参加できる認知症バリアフリー宣言など、企業が参照できる制度や公的な情報基盤はすでに整備されています。
特に健康、食品、介護、生活関連産業では、高齢者やその家族との接点が多いため、認知症に関する制度動向を把握しておくことは、今後の事業環境を考えるうえでも重要です。
日本健康産業促進協会では、今後も健康産業に関わる制度、法規、公的支援策について、事業者が実務で確認しやすい形で情報を整理してまいります。
※本記事は2026年9月時点の公開情報をもとに、事業者向けの一般的な制度情報として整理したものです。個別企業の法的義務、制度適用、申請可否については、必ず最新の公式資料および関係機関の案内をご確認ください。
参考資料
厚生労働省|令和8年度(2026年度)年間行事予定 厚生労働省 年間行事予定
厚生労働省|認知症の日/認知症月間(2026年度) 認知症の日/認知症月間
厚生労働省|認知症施策 厚生労働省 認知症施策
認知症バリアフリー宣言ポータル 認知症バリアフリー宣言ポータル
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認知症バリアフリー宣言|登録組織検索 登録組織検索