2026年夏、健康食品を取り巻く制度は、単なる「表示ルールの変更」にとどまらない段階へ進んでいます。
特に機能性表示食品では、2026年9月1日のGMPに基づく製造管理要件の完全施行を目前に、消費者庁が8月5日に実務的なQ&Aを公表しました。一方、栄養機能食品では表示基準の見直しが進み、「サプリメント」自体を食品衛生法制上どのように位置付けるかという議論も続いています。
健康食品事業者にとって重要なのは、制度改正を個別に追うだけではありません。
原料、製造、分析、表示、届出、販売後管理までを一つの品質管理として考えることが、これまで以上に求められています。
9月1日、機能性表示食品のGMPが完全施行へ
最も期限が迫っているのが、機能性表示食品におけるGMP対応です。
対象となるのは、機能性表示食品のうち、天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等の食品です。消費者庁は2026年9月1日の完全施行に向け、7月に事業者向け説明会を開催し、8月5日には具体的な質問への回答を公表しました。
今回のQ&Aで特に注意したいのが、原材料管理は採用時だけ確認すればよいわけではないという点です。
機能性関与成分を含む原材料については、製品標準書に設定した規格範囲への適合を、受け入れる原材料のロットごとに確認することが求められています。供給者から得た情報を利用することは可能ですが、届出者・製造者側で確認できる管理体制が必要です。
9月1日までに変更届を出せばよい、ではない
もう一つ重要なのが「9月1日」という日付の考え方です。
対象食品について、様式Ⅲの製造基準欄などに未対応部分があったとしても、一律に9月1日までの変更届出が要求されているわけではありません。
ただし、9月1日以降に製造する場合には、製造開始前に対象施設がGMP基準を遵守していることを確認し、必要な変更届出を行う必要があります。
そのため、秋以降の生産予定がある事業者は、9月になってから確認するのではなく、現在の段階でOEM工場との確認を進めておくことが重要です。
海外OEMでも「工場任せ」にはできない
海外工場で製造する機能性表示食品についても注意が必要です。
8月5日のQ&Aでは、海外施設について、消費者庁が施設訪問を行う代わりに、届出者に対して製造管理状況を確認する場合があるとしています。
つまり、海外OEMだから対象外になるのではなく、届出者自身が、その施設でGMP基準に準じた製造・品質管理が行われていることを説明できる状態にしておく必要があります。
海外製造を利用する事業者では、少なくとも次の資料を整理しておくことが望まれます。
- 製造施設・製造工程に関する資料
- 原材料規格書
- 原材料受入・ロット管理記録
- 製品標準書
- 試験検査記録
- 衛生管理・品質管理体制
- 変更管理や逸脱管理に関する記録
「GMP認証書があるから大丈夫」と考えるだけではなく、届出商品と実際の製造管理が結び付いているかを確認する視点が必要です。
自己点検等報告は「遅れて提出」ができない
今回公表されたQ&Aでは、自己点検等報告についても非常に重要な確認が示されました。
自己点検等報告は、販売休止中の商品や、これまで製造・販売実績がない商品であっても、届出を維持しているすべての機能性表示食品について期限内の対応が必要です。
さらに注意したいのは期限です。
消費者庁は、期限を過ぎた自己点検等報告について後から提出することは認められないと明示しています。
期限までに対応しなかった場合、その商品は機能性表示食品としての要件を欠き、機能性表示食品として販売できなくなります。再び機能性表示食品として販売する場合は、新規届出を行い、新しい届出番号を表示する必要があります。
これは単なる事務上の提出期限ではありません。
販売継続そのものに関わる期限として、企業内で管理する必要があります。
「配合した量」ではなく「販売している製品」が確認される
制度強化でもう一つ注目したいのが、市販後の製品確認です。
消費者庁が2026年6月9日に公表した機能性表示食品500検体の買上調査では、11検体で機能性関与成分が表示値を下回っていました。そのうち5検体は販売中止・届出撤回となり、6検体については原因究明と改善対応を行った上で販売を継続するとされています。
ここから事業者が読み取るべきなのは、
「処方上、必要量を投入した」だけでは品質保証にならない
という点です。
原料の含量規格、原料ロット差、製造中のロス、保存期間中の変化、試験方法などによって、最終製品の分析値は変わります。
今後の商品設計では、
原料規格 → 配合設計 → 製造 → 最終製品分析 → 賞味期限までの規格維持
までを連続して考える必要があります。
栄養機能食品では「表示文言」の見直しが進行
機能性表示食品だけでなく、栄養機能食品にも動きがあります。
現在、栄養機能食品では脂肪酸1種類、ミネラル6種類、ビタミン13種類の計20種類について、一定の条件を満たすことで栄養成分の機能を表示できます。
消費者庁は2026年7月、食品表示基準改正案について意見募集を実施し、その後、消費者委員会への諮問を行いました。
検討対象には、
- 栄養成分の下限値・上限値
- 栄養成分の機能を示す定型文言
- 摂取する上での注意事項
が含まれています。
栄養機能食品を販売している企業では、今後の正式な改正内容や経過措置を確認し、既存パッケージやEC商品ページへの影響を整理しておく必要があります。
現時点では改正手続中のため、確定前に表示を変更するのではなく、対象商品の洗い出しと改正後の対応準備を進める段階と考えるのが適切です。
「サプリメント」という区分そのものも検討対象に
さらに長期的な影響が大きいのが、「サプリメント」の規制です。
これまで日本では「サプリメント」という名称自体に明確な法的定義がありませんでした。
2026年に進められている検討では、サプリメントを医薬品でも食品でもない新たな第三分類とするのではなく、引き続き食品の一部として整理した上で、食品衛生法制上の定義や必要な規格・製造管理を検討する方向が示されています。
また、この考え方では、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品といった保健機能食品だけを切り離すのではなく、食品の中を横断する形でサプリメントの対象範囲を整理する方向が示されています。
これは現時点で施行済みの新規制ではなく、現在進行中の制度検討です。
しかし、一般健康食品を扱うメーカーにとっても、今後GMPや安全性管理の考え方が機能性表示食品だけの問題ではなくなる可能性を示す重要な動きです。
事業者が今確認したい5つのポイント
2026年夏の制度動向を踏まえると、健康食品事業者は次の5点を一度整理しておくことを推奨します。
1.自社商品がどの制度に属するか
一般食品、栄養機能食品、機能性表示食品など、商品ごとに適用される制度を明確にします。
2.原材料の規格とロット管理
機能性関与成分だけでなく、品質や安全性に影響する原料について、規格書・試験成績書・ロット管理方法を確認します。
3.OEM工場の製造管理
「工場が対応しているはず」ではなく、自社の商品について、どのような管理と記録が行われているか説明できる状態にします。
4.最終製品の分析
理論配合量だけではなく、販売する最終製品が届出・表示した規格に適合していることを確認します。自己点検等報告で使用する試験では、届出に記載した分析方法との整合性にも注意が必要です。
5.表示と届出後管理
パッケージ表示だけでなく、変更届出、自己点検等報告、試験成績書、安全性情報の確認など、販売開始後の管理まで担当者と期限を明確にしておきます。
JHIPAが考える今後の健康食品品質管理
最近の制度改正を個別に見ると、GMP、食品表示、届出制度、成分分析とそれぞれ異なるテーマに見えます。
しかし、全体として見ると共通する方向があります。
それは、
「正しい表示を作る」ことから、「その表示を裏付ける製品を継続的に作り、確認し、説明できる」ことへ
健康食品事業者に求められる管理が広がっているということです。
商品企画担当だけ、OEM工場だけ、品質管理担当だけで制度対応を完結させることは難しくなっています。
ブランド事業者、OEMメーカー、原料供給者、分析機関がそれぞれの責任範囲を確認し、原料から販売後まで一貫した情報管理体制を構築することが、今後の健康食品事業において重要になるとJHIPAでは考えます。
参考情報
- 消費者庁「機能性表示食品制度に関する説明会-説明事項についての主な質問及び質問に対する回答-」2026年8月公表
- 消費者庁「機能性表示食品制度に関する説明会」2026年7月
- 消費者庁「食品表示法に基づく食品表示基準の一部改正に係る消費者委員会への諮問について」2026年7月17日
- 消費者庁「機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業報告書」2026年6月公表
- 消費者庁・食品衛生基準審議会「サプリメントの規制の在り方に関する新開発食品調査部会の中間とりまとめ」関連資料
※本記事は2026年8月7日時点の公的機関公開情報をもとに、健康食品事業者が制度動向を理解するための参考情報として整理したものです。個別商品の法令適合性については、最新の法令・通知等を確認の上、必要に応じて行政機関や専門家へご確認ください。